5-5
コードの先にはピンク色のプラスチックカプセルが付いていた。
反対側はコントローラーとつながっている。
まさかと思いながらもダイヤルをまわしてみると、卵型のカプセルが小刻みに震えだした。
手指がぴりぴりと痺れている。
あんなに真面目な花織がピンクローターを持っていたなんて。
しかも動くということは、いつもこれを使って、一人で──。
女友達の秘密を知ってしまった衝撃は、小田の体のどこを、どう走り抜けていっただろう。
お湯が沸いたのにも気づかずに、唖然と立ち尽くすしかなかった。
そんなとき、トイレを水洗する音が聞こえた。
小田はあわてて、手にぶら下げたものを引き出しに戻して、興奮と後悔の入り混じった気持ちを落ち着かせる。
トイレを出ると、花織はバスルーム横の洗濯機の中にショーツを落とした。
新しい下着に穿き替えたのだ。
「コーヒー、作りなおしておいたよ」
姿も確認せずに小田は言った。
「ありがとう」
花織の声だけが返ってくる。
そうして二人はまたパソコンの前にくつろぐように座る。
二人きりでこんなにエッチな画像を見ているのに、小田くんはあたしに何もしてこない。
遠慮しているのか、あたしに異性としての魅力が足りないのか。
とっても気になる──。
「どうかしたのか?」
花織の耳に小田の声が吹きかけられる。
「あたしがこんなことを言ったらキャラが違うけど、女の子には生理があるし、エッチして妊娠したら出産もあったりして。だから面倒臭いなあ、なんて思ったの」
この場面で何が言いたいのかわからなかったが、小田はとりあえず頷いておいた。
「それに比べて男は気楽なもんだよな。子孫を残すために精子を提供するだけの存在なわけだしさ」
「そうは言わないけど、そうなのかな」
「どっちだよ」
「いろいろだよ、いろいろ」
「まあな。アダルトブログにのめり込む彼女たちみたいに、他人に言えない秘密ってのが誰にでもある。そこを簡単に覗けてしまう今の環境を壊さないかぎり、馴れ合い体質の社会は何も変わらない」
「どういう意味?」
花織に返答を迫られるが、小田はさっきの彼女の秘密を意識するあまり、口が思うように動かない。
「秘密は秘密のままにしておくのがいいってことさ」
うまくごまかしたつもりだった。
「小田くんのしていることは誰も褒めてくれないけど、その秘密を利用して彼女たちに関係を迫るわけでもないよね?」
「あたりまえだ」
「知ってもいい秘密だってあるんじゃないかな」
「知ってもいい秘密か……」