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部屋に一人残された小田は思う。
あいつがあの程度で酔いつぶれるなんて、よっぽど疲れていたんだろうな。
最近じゃあバイトばかり入れて、四人で顔を合わせる機会も減ってきている。
みんなそうやってだんだん会わなくなっていって、社会人になれば別々の道へ進んで行くんだ。
俺も大学を卒業したら、こんな推理ゲームなんかともおさらばしよう。
そうして今回の事件が解決できたあかつきには、花織に自分の気持ちを伝えよう──。
パソコンの内蔵ファンはいそがしく回転している様子で、徳寺麻美の恥部を惜しみなく映し出したまま、低く唸っている。
小田が次のサムネイルに進もうとしたとき、彼の頭の中には別の疑問が生まれていた。
それを確かめれば、事件解決への糸口が掴めるかもしれないとひらめき、徳寺麻美のブログページとリンクしている姉妹サイトへ進んだ。
そこは小田が想像していたようなアダルトサイトではなく、女性ユーザーの『美』を評価したり投稿するための交流サイトだった。
ブログサイトを『裏』とするならば、交流サイトは『表』といったところだろう。
サイト全体にハロウィンをイメージさせる装飾やアイコンが散りばめられていて、それはカボチャだったり、魔女だったり、コウモリだったりする。
魔女──。
小田の濃い眉毛がぴくりと曲がり、その手はもう次の動作をはじめていた。
交流サイトのイベントトピックスを確認すると、それはあった。
ハロウィンにちなんだ『魔女コンテスト』で投稿者を募っているところに、全国の美しい魔女たちが集ってビューティーを競い合っていたのだ。
一見して普通のガールズサイトのようでいて、しかしそこはアダルトブログサイトの姉妹サイトというだけあって、裏のブログで女性器を露出している女の子が、表のコンテストでは何の疑いもなく素顔を出していた。
それぞれまったく異なるハンドルネームで投稿しているから、素顔と女性器が一致することはないが、この魔女コンテストに徳寺麻美が関わっているというのは疑いようがなかった。
そういえば、いちばん肝心なことを忘れていた。
被害者本人は、誰にレイプされたと言っているのだろうか。
フリーターの数馬良久か、我らが教授の平家悠利か、それとも別の誰かなのか──。
小田の目に新たな意志が宿って、それは夜の暗がりのどこかを見つめていた。