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花織たちの通うS大学の教授である平家悠利は、一年から三年までの学生らに少人数の研究チームを組ませて、チームマンデーからチームフライデーといった具合に、それぞれの曜日にのみ活動させるという特異な試みをしている。
一つのチームにさまざまな学生が混在しているので、共通のテーマに対して偏った見解にならずに済むし、社会に出たときの糧として、学生個人のキャリアアップもはかれるというのが彼の狙いである。
先のレイプ事件の被害者である徳寺麻美はチームチューズデーに、行方不明の植原咲はチームウェンズデーにそれぞれ在籍している。
ちなみに優子はチームサーズデー、花織はチームフライデーとして活動していた。
こうして見てみると確かに、平家教授の研究チームに所属している二人の女子学生が、今回の事件に関係しているというのは、偶然のように見える。
しかし小田の反射神経はそれを見過ごそうとはしなかった。
このところ活躍の場が多くなった『ディープ』には感情こそないが、小田や黒城の良きパートナーとして、ときにはセックス以上の快感をあたえてくれる存在なのだ。
だからこそ、この検索作業は自慰行為に等しいとも言える。
「現場に残されていた体液の鑑定結果から、自称フリーターで二十五歳の数馬良久(かずまよしひさ)が容疑者として浮上した。警察の取り調べに対して、やっていない、と容疑を否認しており、被害者の徳寺麻美さんとも面識はなかったという。さらに、行方不明の植原咲さんとも接点がなく、警察では引き続き取り調べを行なっている──ということは、いよいよ平家氏が疑わしくなってくるな」
小田の横で缶ビールをやりながら、冷静な目を向けて黒城が意見する。
「彼女たちのほかにも、教授の研究生の誰かが猥褻事件に遭っていたとしたら、そこを突っつけば何か出るだろう」
「出るさ。俺らを勃起させてくれる、とっておきの射精ネタが」
これは元々、花織から依頼された案件である。
そこに個人的な嗜好が介入しているとしても、自分が納得のいく結果にまで辿り着きたいと小田は思っていた。