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「せっかくのランチに、嫌みな匂いを盛られちゃったね」
そう言って口を尖らせる優子のそばで、紅潮した頬を持て余している花織。
そういえば、と小田は眉をつり上げた。
「被害に遭った徳寺麻美も、行方不明の植原咲も、平家先生の研究チームに籍が入っていたよな?」
「そうなの?」と花織。
「ああ、間違いない」
「よその班のことは知らないから、あたしも気づかなかった」と優子が身を乗り出す。
「それじゃあ、平家先生と今回の事件がつながっているとでも言いたいの?」
花織のこの台詞に、「可能性はゼロじゃないだろうな」と小田が返した。
するとここで黒城が割って入る。
「あの色男教授なら関係していても不思議じゃないな。ひょっとしたら、植原咲の行方も知っているかもしれないぜ」
「じゃあさあ、今頃はどこかに監禁されていて、変な道具とかでもてあそばれているのかもね」
優子の口にオブラートはない。
「ちょっと、優子、ほかの子に聞こえたらどうするの?」と花織が肘で小突く。
「だって、ミスキャンパスに選ばれるくらいの可愛い女子大生だもん。誰だってそんな想像するよね?黒城くん」
「俺かよ。そうだな。花織や優子は対象外だとして、彼女ならそういうことになっているかもしれないな」
「どうして花織とあたしが圏外なわけ?黒城くんなんか、頼まれたってエッチしてあげないんだから」
黒城と優子が唾を飛ばし合っている横で、小田は花織のほうを窺った。
「例の『魔女狩り』のことなんだが。もしあれが平家先生とつながっていた場合には、花織たちにも危険が降りかかるかもしれない」
「小田くんが思っているよりも、事態はずっと単純かもよ。あたしは別に気にしてないから」
「頼もしいことだ」
話が尽きない四人のテーブルには、カフェテリア式のランチプレートが箸もつけられずにいる。
「お腹が空いちゃった」
花織がはにかむと、それぞれの胃袋事情に合わせたペースで、みんなが楽しく食欲を満たしていった。