3-1
花織と優子は、ラクロス部の部員たちとスポーツジムで汗を流したあと、小田が指定してきた店で他愛のない話をしていた。
「優子の話、あたしにはよくわかんない」
「たとえばだけど、激しい運動とかしているとね、知らないうちに処女膜が破けちゃうんだって」
「ふうん」
「痛くも痒くもないらしいんだけど、それもなんだか味気ないよね」
「そうかなあ」
低アルコールのカクテルがまわってきたのか、花織の頬は仄かに火照り、ほかほかした気分になっていた。
陽の落ちた薄暗い窓の外では、街の夜景がちらちらと灯り、ちょうどバースデーケーキの蝋燭(ろうそく)のようにビルや歩道を飾っている。
間もなく店の出入り口のドアベルが鳴り、一人の青年が入ってきた。
彼はウエイトレスとかるく口を利くと、申し訳なさそうに太い眉毛を曲げ、花織と優子のそばの椅子に座る。
「小田くん、ちょっと遅いんじゃない?そっちから呼び出しておいて、この扱いは何?」
真っ先に口を開いた優子が顎を突き出して、小田のほうをのぞき込む。
「ごめん、いろいろと調べものがあったもんだから、時間より遅れてしまった」
悪びれたふうの小田は、まだ少し息が上がっている。
「二人は何を飲んでるんだ?」
「そんなことより、黒城くんは一緒じゃないの?」
カクテルで湿らせた唇を微動させて花織が訊いた。
「あいつは今日、バイトがあって来られないんだ。それでさっそくなんだが、例の事件のことを報告させてくれ」
小田はウエイトレスにジントニックを注文すると、収穫あり気な目を二人に向ける。