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「これってつまり、その、なんていうか、いわゆるアダルト系のおもちゃみたいなのを着けたまま、外出したってことだよね?」
優子にしてはめずらしく言葉を選びつつ、小田に訊いた。
「だろうな。花織はどう思う?」
「どうだろう。もしこれがほんとうに彼女のブログだとしたら、彼とのあいだに何かトラブルがあったんだと思う。そんなふうに洗脳されちゃったのかな」
「そんなふうにって?」
「エッチな気分にさせるために、彼女に何かしたんだよ、きっと。普通の女の子が、そんな大胆な行動をするわけがないもん」
花織は明らかに嫌悪の表情をちらつかせている。
そしてハンカチを手に席を外した。
「花織って、ほんとうにこういう話題は苦手だよね。まさか処女なわけないだろうし」
「まあな、優子のようにはいかないさ」
「小田くんなら、あたしと花織のどっちとエッチしてみたい?」
「そうきたか」
小田は苦笑いを浮かべて、「卒業するまでには論文にまとめておくよ」と優子の鼻面を摘んだ。
「あとさ、徳寺麻美のことを探っていたら、『魔女狩り』っていう関連キーワードも出てきたんだ」
「その子が魔女だっていうの?」
「どうだろうな。オカルト好きな連中が、勝手なことをネットに流しているだけかもしれないし」
「ふうん」
優子は興味のない返事をした。
「若い女の子を掴まえておいて、魔女はないんじゃない。まったく無神経なんだから」
トイレから戻った花織が横から割り込む。
「ハロウィンに引っ掛けたつもりじゃないのか?」と小田。
「それこそセンスもデリカシーもないよ」
「俺はまだこのキーワードの先には手をつけていない。ここからは黒城にアシストしてもらうつもりだ」
三人それぞれ違う色のカクテルを嗜(たしな)み、それぞれの思いを酔いにまかせて巡らせていた。