3-2
「やっぱりうちの大学の女の子が絡んでいた。しかも二人だ」
「それって、強姦された子と、行方不明になっている子だよね?」
優子が小田の話をあおる。
「そういうことだ。被害者は二年の徳寺麻美っていう子で、その彼女を発見したのが、こっちも二年の植原咲。で、今のところ行方がわからないんだけど、この二人の名前に心当たりはあるか?」
花織と優子は互いに顔を見合わせて、首を横に振る。
「俺の記憶違いじゃなかったら、植原咲っていう子は、確か昨年のミスキャンパスだったような気がするんだよな」
小田の言葉に花織がひらめいた。
「あのときの子かあ。あたしも優子もいいところまで行ったのに、僅差でその子に負けちゃったんだよね」
「名前はあんまり覚えてないけど、あたしも顔は知ってる。だけど、胸はあたしのほうが大きかったよね?」
「それは俺も認めるよ。だとしたら、優子にはないものを彼女が持っていたってことだろう」
「あたしにないものって?」
「女性としての品格さ」
「どうせあたしは、生まれたときからノー品格ですよ」
そう言って陽気に笑う優子の魅力は、自分を飾らないところにある。
すかさず花織がグラスを掲げて、「ノー品格に、乾杯」と笑うと、あとの二人もそれに応じてグラスを交わらせる。
さっきまで流れていたジャズに代わって、ボサノバの女性ボーカルが店内に染み渡っていく。
間接照明だけの明かりを頼りに、小田の視線がふたたび彼女らに向けられ、その口からさらなるネタが告げられた。
「我らがミスキャンパスの行方はわからないけど、いろいろ調べていくうちに、被害者の徳寺麻美のブログが出てきたんだ。信憑性に関しては何とも言えないが、そこに今回の事件の鍵が隠されているような気がするんだ」
「ただのレイプ事件じゃないってことね。聞かせてよ」
興味津々に耳を傾ける優子の隣で、花織は黙ったままでいる。
これなんだけどさ、と小田は紙ベースの文書を二人に見せた。