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あいつから直接電話が来るときは、何かやらかそうと企んでいるときだけだ。
いつもならメールだけで用件を済ませてしまうからな──。
小田佑介(おだゆうすけ)からの着信コールを聞いた時点で、黒城和哉(くろきかずや)はぴんときていた。
「俺だ」
「よく知ってるよ」
「ついさっき、花織からメールが来たんだ。今朝の新聞に出ていた強姦事件に、うちの大学の誰かが絡んでいないか心配しているらしい」
「それは俺も思った」
「久々の依頼だ。どうする?」
「悪い、これからバイトがあるんだ。とりあえず小田のほうで調べておいてくれないか?」
「俺だってそんなに暇じゃないんだが。まあ、研究レポートのほうも煮詰まっていたところだし、ここらで空気を入れ換えるか」
「婚姻届を出すわけじゃないんだからさ、レポートなんて、『やっつけ』でいいんだよ」
「だな」
一通りのやり取りのあと、小田は熱くなっていた。
わくわくすることが目の前にあると、こんなふうに胸が焼け焦げる感覚になるのだと、小田はとっくに自己分析していた。