君に忍び寄る魔の手-9
こんなオタク野郎なんかに芽衣子をめちゃくちゃにされてたまるかよ、と俺は渾身の力を込めて男に殴りかかろうとしたその時だった。
「ダメです、手島さん!」
遅れて俺の元にやってきた園田が、俺を羽交い締めにして抑えつけてきた。
「放せよ、園田! このままじゃ芽衣子が犯られちまうだろ!」
奴の腕を振りほどこうと身体をがむしゃらに動かすが、意外と力が強い園田にしっかり脇を固められてしまい、なかなか振り切ることができない。
「あなた、さんざん有野さんを手にかけようとしていたから、成仏ポイントがかなり減ってるんです!
ここでさらにこの男をボコボコにしたら、あなたは有野さんとはもう二度と会えないようなひどい環境で生まれ変わってしまうかもしれないんですよ!」
奴の言葉にガクリと身体の力が抜けた。
こんな切羽詰まった状況なのに、芽衣子を助けることよりも自分の保身に意識が向く。
助けたら、ますます芽衣子との距離が広がる。
このままほっとけば、芽衣子はコイツに犯された後で、もしかしたら殺されるかもしれない。
そうすれば、望み通りじゃないか。
自分がそこまで考えてしまっている事実に愕然としつつ、石になったように動けなくなってしまった身体を園田に預けるようにして、俺はただただ必死に抵抗している芽衣子の姿をぼんやり眺めていた。