君に忍び寄る魔の手-6
急いで十字路を右に曲がり、サンダルが落ちた場所に近づく。
汚い食堂の前に落ちていたサンダルを拾い上げようとした瞬間、芽衣子の短い悲鳴が聞こえ、俺は慌てて声のする方に顔を向ける。
しかし、それでも彼女の姿は見当たらない。
街灯もほとんどその役割を果たしていない薄暗がりの中、焦る気持ちをなんとか抑えながら意識を聴覚のみに集中させて、耳を澄ます。
服が擦れるような音、裸足でビタンビタンとアスファルトを打ちつけるような音、こもるような芽衣子の呻き声が耳の中に響くと、芽衣子がいるであろう場所の見当が大体ついた。
そこは、俺がサンダルを拾い上げた場所から数メートルほど奥まった所だった。
芽衣子の気配を感じたのは、この食堂の駐車場からで、そこはわずか一台しか停められないささやかな場所になっている。
しかも、そこは隣や裏手の住宅の塀に囲まれていて、一際見通しが悪い。
ただでさえ薄暗いこの周辺に、ここから闇を供給しているんではないかというほど、一際暗く気味の悪い空間だった。