君に忍び寄る魔の手-3
ラーメン屋から俺達のアパートまでは距離にして、500メートルほど。
賑やかな商店街の角を曲がり、少し薄暗い古びた住宅街を通るとかなり近道になる。
いつものごとく、芽衣子も久留米に手を振りながらそこを曲がって行った。
大通りを通って帰れば人も多いし安心なのだが、俺達はいつも使い勝手のよさからこのほとんど人の通らないオバケでも出そうな道を利用していた。
だから園田が、
「有野さん、危機意識なさすぎですね。
若い女の子が一人でこんな暗い道をフラフラ歩いて……、通り魔に殺されたりしたらどうするんでしょうね」
と言うまで、俺もこの辺りが犯罪の起こりやすそうな環境だとは気付かなかった。
しかし立て続けに園田が、
「あっ、でも殺されるんなら手島さんにとったら好都合ですね!」
と、またしても皮肉めいた顔をこちらに向けるもんだから、意識はすっかり園田の方に向いてしまった。
天使って心清らかで慈愛に満ちた存在だと思っていただけに、コイツの嫌みな性格がすごく鼻につく。
「うっせえよ、お前なんでそんなに性格わりいんだよ!」
そう言って園田の頭をグシャグシャに乱してやった。
しかしそうやって園田にちょっかいを出しながらも、何気なく言った奴の言葉が、少しだけ引っかかっていた。