君に忍び寄る魔の手-2
「じゃあ、帰るか」
久留米が芽衣子の横に並び、俺はハッと焦り出す。
このパターンは、送り狼になるに違いない!
「てめえ、下心満載で芽衣子のアパートにまた上がり込むのかよ!」
思わず久留米に蹴りを入れそうになって、片足を上げたが、
「あ、送ってくれなくても大丈夫だよ。
ごちそうしてくれただけでもう充分!」
と、芽衣子が久留米を制したので、その足を再び下ろした。
「……そうか?」
「うん、本当に大丈夫だから!
久留米くん、またね」
芽衣子は笑って手を振りながら角を勢いよく曲がって行った。
久留米は少し淋しそうな顔で、芽衣子が消えて行った曲がり角をしばらく見つめていたが、やがてクルッと踵を返すと駅の方へと歩いて行った。
「ふう、これで芽衣子の貞操は守られたな」
一息ついて、手の甲で額を拭うと、園田はニヤリと不敵な笑みをこちらに向けた。
「でも、あの二人はとっくに深ーい深ーい仲ですもんね。
今さら貞操もクソもないですよ。
愛がなきゃできないでしょ、あんなに激しくて濃厚なセッ……」
園田のムカつく面とムカつく言葉にめちゃくちゃ苛立った俺は、奴が最後まで言い切る前に、思いっきり眼鏡ごとアイアンクローをかましてやった。