投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

a village
【二次創作 その他小説】

a villageの最初へ a village 113 a village 115 a villageの最後へ

I-10

 翌朝。

 雛子は、何時もの様に自宅を出た。
 朝の日射しは、既に村の半分以上を覆いつくす。坂を降りて行って一本道に出た傍は、大の家の田圃だ。
 田植え直後は一面、泥色が広がっていたのに、今は萌黄色に染まっている。もう暫くすると、稲穂が顔を出すだろう。

 一本道を右に百メートル程歩いて行くと、右手に山へと続く道がある。道の途中が小学校だ。

「今日も、暑くなりそうね」

 雛子は仰ぎ見た。曇一つ無い空は、薄くけぶっている。山々に囲まれた美和野村は、朝晩の冷え込みに反して、昼間はかなり暑い。典型的な盆地気候だ。

「あら?」

 校舎を経て、校庭に出た所で雛子は、おかしな光景に出会した。鶏小屋の中に、高坂と吉岡の姿を見たのだ。

「おはようございます!」

 鶏小屋に駆け寄った。吉岡を泊めている手前、今朝は来れないと思っていた。
 その辺りを訊くと、

「彼は、朝五時にゃ大学の畑や田圃に出向いて、育成状況を逐一観察しとるそうですわ。
 じゃから、今日も“一宿一飯の恩義”やから手伝う言うて、 利かんのですわ」

 高坂は、笑いながらそう答えた。

 吉岡の方は、酷く謙遜した様子だ。

「いえ。長い事、それで生活してるんで、寝てられ無いんですよ」
「そうなんですか」
「短い間ですが、邪魔させて下さい!」

 狭い鶏小屋に、三人の笑い声が挙がった。



 掃除を終えて、何時もは高坂と子供逹を出迎える雛子だが、今日は吉岡を携えて校長室へと向かっていた。

「これが、美和野村の地図です……」

 雛子は写し書きした地図を広げ、選定した場所を指差した。

「調査して頂きたい場所は、此処と此処なんです」
「どれどれ……」

 具体的な場所を知り、吉岡は地図を食い入る様に見詰める。何かを読み取ろうとする様は、学者然としていた。

「──現場を視ないと何とも言えませんが」

 徐に、吉岡が口を開いた。

「このニ箇所を選定されたのは?」
「わ、私です」

 選定した経緯を話す雛子。“計画”を早めたいのだと付け加るのを忘れない。

「なるほどねえ……」

 話を聞いて吉岡は苦笑する。 善かれと思って行った事が、浅計なのは往々にして有る事だ。

「──じゃあ、こうしましょう!」

 暫く熟考を重ねた後、吉岡は調査作業を全面的に見直すと言い出した。


a villageの最初へ a village 113 a village 115 a villageの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前