どっちがどっち-1
「ちょっとお聞きしたいのですが……ライン様とエン導師は、どちらがネコですの?」
ゴバアッ
ガシャガシャ
パリーンッ
爽やかな風が吹き込むファンの城の一室で、のんびりした質問と騒がしい音が響く。
「げほっ……ス……ステラ?」
飲んでいたお茶を気管に入れた王弟ギルフォードは、激しく咳き込みながら質問の主である妻を涙目で見つめた。
「わたくし……変な事聞きました?」
双子のベビーのうちの1人、ランスロットを抱いたステラはきょとんとして首を傾げる。
「変っていうか……」
ファンの国王ラインハルトは困惑した顔で恋人の宮廷魔導師エンに目を向けた。
エンは腹を抱えて爆笑し、床をドンドン叩いている。
「アハハハハっステラってばウケるぅ〜…何でそんな事聞こうと思ったのさ?」
聞かれた内容はゲイカップルのラインハルトとエン、どっちが女役なのかという事。
「あのですね、わたくし、その手の本が好きで良く読んでますでしょう?」
「うんうん」
「そういう本って色んな方が書かれてますけど、実在の人物をモデルにしますと何となく役は決まってきますの」
例えばアースはタチだとか、デレクシスはネコだとか。
たまにアースのネコバージョンもあったりするが、相手は人間外だったりとか……そんな事は置いといて。
「でも、ライン様とエン導師ってどっちも有りって感じで……どの本でも配役が半々ぐらいなので……」
唯一のリアルゲイカップルなのに役が曖昧なのは気になるのだ。
ステラのその言葉に、部屋に居たメイド2人が割れたカップを片付けながらうんうん頷く。
どうやらステラは腐女子代表といった所だ。
「ふうん……どうする〜?ライン?教えても良い〜?」
エンは床に胡座をかいてニヤニヤしながらラインハルトを覗き見る。
「……別に構わないが……」
ラインハルトの視線は空中をさ迷い、ギルフォードとがっちり合ってしまう。
ギルフォードはビキッと固まり、ぎこちなくソファーから立ち上がった。
「わ、私はノービィの所に行くから……から……じゃあ……」
物凄い動揺と共に去っていくギルフォードを、エンは再び爆笑しながら見送る。
ギルフォードはゲイネタが苦手だ。
苦手というか、双子なので、ラインハルトと自分を重ねてしまって嫌なのだ。