君が恋人に変わった日-8
「芽衣子はかなり滑れるようになったもんな」
久留米が優しい笑顔を芽衣子に向けると、彼女もにっこり奴に笑いかけた。
「うん、久留米くんの教え方が上手かったんだよ」
「いやいや、俺がビシバシ鍛えたからだろ? だいたい久留米は過保護すぎんだよ。
あのペースでチンタラ滑ってたら、いつまで経っても上手くなんねえんだよ。
無理矢理でもリフト乗ってよかったよな」
俺は、芽衣子が持っているスナック菓子の袋に手を突っ込んで、それを口に放り投げながらガハハと笑った。
「よく言うよ。自分が思いっきり滑りたかったからでしょ?
下で待ってるってどんどん置いてくんだもん」
芽衣子は頬を膨らませて俺の肩を叩いた。
確かに彼女の言うとおり、俺はリフトに乗って頂上まで来たら、芽衣子を助けるなんて言ったことすら忘れ、ガンガン滑っては下の方から手招きだけするという、超無責任なコーチをしていたのだ。
たまたま俺達のいる所にやってきた久留米によって、芽衣子もなんとか滑って降りて来ることができたという始末。
置いてけぼりをくらった芽衣子に文句を言われ、無責任だと久留米には拳骨を落とされたが、“最終的には三人一緒でボードを満喫できたんだからよかったじゃん”とヘラヘラ笑ってごまかした。