君が恋人に変わった日-6
芽衣子の滑りはぎこちなかったが、なんとかターンも出来るようになっていた。
久留米の教え方がとても上手かったのだろう、片足だけボードを付けた状態で移動するスケーティングや、止まり方、転び方まで、基本的なことは全て下手なりにマスターしていた。
何度か緩い斜面を登って芽衣子の滑りを見てみたが、へっぴり腰を差し引いてもそれなりの形になっている。
多分、これなら大丈夫だろう。
「芽衣子、リフト行こうぜ」
緩やかな斜面をゆっくり滑ってきた芽衣子に、俺はそう提案した。
せっかくここまで来たんだからやっぱり思いっきり滑りたいという、俺のわがままがまたムクムク出てきた。
「えっ、リフトは……」
やはり芽衣子は顔を強張らせ、首を横に振った。
「だってせっかくここまで来たのにリフトに乗らないでどうすんだよ。
お前、思った以上に滑れるようになってるし、絶対楽しいって」
芽衣子は木の葉落としという横滑りも出来ていたし、ヤバいときは無理せずボードを担いで降りれば問題ないだろうと判断した俺は、グイッと彼女の手を引いた。
「でも、リフト降りるときとか怖いし……」
芽衣子はまだまだ難色を示している。
「大丈夫! いざというときは俺が絶対助けてやるよ」
「ほ、本当……?」
芽衣子は、少し顔を赤くして俺を見つめた。
「ホントホント、怪我なんてさせないように守ってやるからさ!」
俺は、ふざけて口説き文句のような台詞を彼女に向けて言い放った。
「じゃあ、危ないときはちゃんと助けてよ」
彼女は、どことなく更に顔が赤くなったように見えたが、雪焼けのせいなんだろうな、とそこまで深く考えなかった。