君が恋人に変わった日-5
合宿二日目も、眩しい程の晴天だった。
前日、ひたすら芽衣子のコーチに徹していた久留米は俺に向かって、“芽衣子に無理させんじゃねえぞ”と、散々念を押してから、リフト乗り場へ向かって行った。
「まったく、アイツは子離れできない親みてえだな」
小さくなっていく久留米の背中を見ながらポツリと呟くと、
「でも、久留米くんすごく丁寧に教えてくれたからかなり上達したんだよ!」
と、芽衣子がフフッと微笑んだ。
「じゃあ、久留米の特訓の成果を見せてもらうか。
言っとくけど、俺は久留米みたく甘やかさねえぞ。スパルタでガンガン行くからな」
俺達はそうやって笑いながら、ボードを担ぎ、緩やかな斜面を登っていた。
ギュッギュッと雪を踏み込む音が響く。
少し登った所で、ゲレンデの隅に座り込み、ブーツをビンディングに乗せてストラップのラチェットをカチカチと締めていく。
「よし、じゃあ滑ってみろ」
フラフラしながらもなんとか立ち上がった彼女は、膝をグッと曲げ、ひけた腰のままでスーッとボードをゆっくり滑らせて行った。