君が恋人に変わった日-4
思わずパッと明るい顔になって“えっ、いいの?”と口に出しそうになったが、それはあまりに芽衣子に失礼だと思って、慌てて緩んだ口をキュッと引き締めた。
「いいよ、俺もお前らに付き合うよ?」
一刻も早くリフトに乗りたい本音を隠しながら、久留米の申し出をとりあえず遠慮してみた。
「だから芽衣子のコーチは交代でするんだよ。
最初はまずお前滑って来い。んで昼飯挟んだら今度はバトンタッチだ、それでいいだろ?」
おそらく久留米は芽衣子が気を揉むことのないように、あえて俺にも交代で教える案を提示してきたのだろう。
まあ、この際わがままは言ってられまい。
俺は久留米の提案に首を縦に振った。
そうして俺は、芽衣子と久留米と別行動をとったわけだが、久しぶりのボードがあまりに楽しくて、ついつい昼飯の集合時間も忘れてしまうほど満喫してしまった。
雪山で携帯を持って行った所で電波は入らないし、湿気で壊れてしまうかもしれないと、ロッカーに預けてしまったもんだから、時間が全くわからなくなってしまったのだ。
とはいえ、リフト乗り場やレストハウスの外壁に時計が掛けられているから、時間がわからないはずがない。
でも、俺はあえてそれに気付かない振りをしていたし、そうしているうちに本当に時間のことなど忘れてしまった。
たまたまリフトに並んでいるときに、石澤さんとその彼氏が前に並んでいるのを見て、“ああ、石澤さんリフト乗れるまでになったんだ”とか“俺も女欲しいなあ”とか何気なく思った所で、交代で芽衣子にコーチする約束をようやく思い出したのだ。
慌てて芽衣子達の元へ向かったら、二人は呆れた顔で俺を迎えてくれた。
その頃にはすでに3時を過ぎていた。
俺が申し訳なさそうに謝ると、芽衣子は
「明日は手島くんが専属コーチね」
と悪戯っぽい笑顔を見せた。