君が恋人に変わった日-15
「久留米くん、すごいいびき……」
奴のいびきに驚いた俺と芽衣子は、まじまじと久留米のデカい背中を見つめた。
「コイツ、普段はいびきなんてかかないんだけどな」
俺はそんな久留米に少し違和感を感じて首を傾げた。
「よっぽど疲れてたんだね」
だが芽衣子の言葉にすぐさま納得し、
「お前の子守でか?」
と、そんな違和感を深く気にも留めずに笑った。
「もう、失礼!」
芽衣子がむくれた顔で俺の肩を叩く。
「だってそうだろ、久留米はお前の保護者みてえなもんだし」
「まあ、確かにね」
「じゃあ俺、久留米にお許しもらわないといけないかな、“お父さん、芽衣子さんとお付き合いさせて下さい”って」
俺がそう言うと、芽衣子がクスクス笑った。
「せめてお兄さんにしてあげなよ」
「そうか」
俺もつられて笑いながら、芽衣子の肩を抱き寄せた。
そして、チラッと久留米の方を一瞥してから、
「でもコイツなら、俺達のこときっと喜んでくれると思うぞ」
と芽衣子に微笑んだ。
「そうだね」
芽衣子も微笑んで久留米の背中をチラリと見た。
そうして俺達は、どことなく不自然な久留米のいびきを聞きながら、何度も唇を交わし合っていた。