君が恋人に変わった日-13
「あたし、手島くんの彼女になりたい」
芽衣子の突拍子のない言葉にびっくりして、お茶が気管に入り込みゲホゲホむせ返ってしまった。
「芽衣子……?」
ひとしきり咳き込んで、なんとか呼吸を整えてから芽衣子を見やると、彼女は上気した頬とやや潤んだ瞳をこちらにまっすぐ向けて、さらに続けた。
「あたし、手島くんのことずっと好きだった。
ずっと彼女になりたいってそればかり考えてたの。
……だから、久留米くんの彼女のフリしろなんて言わないで。
冗談でも好きな人にそんなこと言われたら、あたし……」
芽衣子はそう言って 顔を俯かせ、下唇を白くなるくらい噛み締めた。
俺はというと、頭がすっかり真っ白になってペットボトルを落としそうになっていた。
しかし、震える手でなんとかジュースホルダーにそれを戻し、再び彼女に視線を移す。
いつもと全く違う芽衣子の様子に面食らったけど、華奢な肩を震わせて俯く彼女の姿が急に愛おしくなってきた。
はっきり言って、芽衣子のことを友達以上に意識したことはなかった。
それなのに告白された途端、頭の中で今まで気にしなかった芽衣子の存在が、急に異性として認識され始めたのだ。
まるでリトマス試験紙のように、芽衣子に対する気持ちは瞬時に、単なる友達から恋愛対象へと変化し、顔がカアッと熱くなって、手に汗が滲んできた。