君が恋人に変わった日-12
「あたし……手島くんの地元に行っていいの?」
芽衣子が瞳を揺らしながら俺の顔を見上げた。
「おー、大歓迎大歓迎。
久留米の実家とどちらに泊まり込むか迷ったけど、多分今年は俺ん家になる確率が高いな。
久留米の妹、高校受験控えてるらしくてさ、まさか妹の前で滑ろう滑ろうなんて言えねえだろ」
「あ、三人か……」
「ん、何か言った?」
芽衣子がゴニョゴニョ小声で呟いていたので、聞き返したら彼女は慌てて“何でもない”と首を横に振った。
「まあ俺は大歓迎なんだけど、ただうちの親な、女連れて来るとうるせえんだよ。
だから俺ん家来る時は、久留米の彼女のフリしてくれな」
そう言ってニッと笑うとかさついた唇がピキッと割れた。
散々口を開けて寝ていたから唇も口の中もカラカラに乾いていたらしい。
俺は、ジュースホルダーに置いていたペットボトルのお茶に手を伸ばし、パキッと蓋を開けた。
そして口に運んで美味そうに喉を鳴らす俺を、芽衣子がじっと見つめていたので、何だろうと彼女の顔を見つめ返したその時だった。