ホワイトライ-4
仲良き兄妹は
片時も離れる事はなかった
今宵もまた例外なく
離れる事なく傍にいる
冷たいままの妹を
兄はただただ包むだけ
兄がただただ包むだけ
―ゴォォォ―
妹の葬式が
滞りなく終わろうとも
妹の亡骸が
偽りなく燃えようとも
それは悪夢で白昼夢
兄は現実を認めない
兄は真実を求めない
―プルルプルル―
「ピッ。タダ今、留守ニシテオリマス。ゴ用件ノアル方ハ、めっせーじヲドウゾ。…ピーー」
「あ、もしもし!先生!…妹さんの事、聞きました。大変、お気の毒に………。これではとても、明日の演奏会は無理ですね……。御来客予定の皆様には、こちらから中止の連絡は致しますので………どうかお体にはお気を付けて……それでは……」
いったいどのぐらいの時間こうしているのだろう
愛用のピアノに向ったまま微動だにしない響
死者でもなく生者でもなく
飲まず
食わず
寝ず
考えず
「……う…うぅ……」
深い絶望
限りない虚無
溢れる後悔
何時しか涙は枯れ果て
低い唸り声だけが
壊れた部屋に呼霊する
「…うぅ…………」
人はいつか死ぬ
しかしただ死ぬのではない
人は必ず何かを残す
財産、意志、感動、未来
時にはカタチとして
時にはココロとして
だが響に残されたモノは
永久の追憶
底知れぬ孤独
「…なん……で……だ…よ………沙奈…さな……サ……ナ……うぅ………」
欠けがえの無いモノとは
それがなくては成り立たぬという事
兄の欠けがえの無い妹とは
彼女がなくては成り立たぬ
明日を生きる事の意味