赤い口紅を引いた恋人-1
「くっ、加奈っ やべぇって それ以上舐められたらっ んぁっ」
そう言うと俺はビクビクと腰を震わせながら、大量の精液を加奈の腔内へと吐き出した。
右手でゆっくり根元を扱きながら、タイミングよくそれを喉に流す加奈。
陰茎に舌を絡めながら、少しずつ唇を先端へと移動させると、
まるで残りのすべてを絞り出すように、頬をすぼめ優しく吸い上げていった。
「おまえ…… いったいどこでそんな技術を覚えて…… いてっ」
「り、龍二さんが全部教えてくれたんじゃないですかっ」
陰茎から口を外すと、恥ずかしそうに指で拭いながら頬を染める。
どうやら加奈はまだ、俺以外の男を知らないらしい。
「ちょっと!なんですかっ 俺以外の男って!」
「おいっ モノローグに突っ込み入れんなよっ」
「酷いです!私っ 龍二さん以外の男の人になんて興味ありませんからっ」
そう言って頬を膨らませる加奈。
わかってる、わかってるんだけど男なんてみんなこうなんだ。
形なんて気にしないとか、好きにすればいいとか、
口では恰好いいことを言っておきながらも独占欲の塊みたいなもの。
せめてその時が来たとき狼狽えぬよう、意識的に保険をかける愚かな生きものなんだよ。
「はぁっ…… ってかおまえさ、ホントに彼氏とかつくんないわけ?」
キツイ目で俺を睨む加奈。
なかなかどうして、出会った頃に比べて随分と女になったじゃないか。
思いのほか冷や汗が出てしまうのは──奈美子のことを隠す後ろめたさからか?
「……先週、会社の同僚に告白されました」
「ほ、ほほぉ…… それでなんて?」
「……お断りしましたよ?好きな人がいますからって……」
「好きな人?俺の知ってるヤツなのか? ……いてぇって!」
加奈は俺の肩にがぶりと噛みついた。
勘弁してくれよ、この手の話をするたび俺の身体はいつも傷だらけなんだから。
「ホント物好きなヤツだな…… こんなおっさんのどこがいいんだ?」
「……龍二さんはおじさんなんかじゃないです」
「いやいや、ひとまわり違うんだぞ?充分おっさんだろっ」
「は、母だってっ 父とはひとまわり以上離れてますからっ」
「へ、へぇ〜」
思わぬ真実に一瞬ドキッとした。
「あのさ、つかぬこと聞くが親父さんってその…… ヒゲとか生えてる?」
「おヒゲですか?今は無いですけど、私が小さい頃はたしか……」
「あ、いいっ やっぱ今の無しっ 忘れてくれ!」
俺は自分で聞いておきながら思わず耳を塞いだ。
加奈の母親──奈美子とあって以来、どうにもこの手の話は心臓に悪い。