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黒の他人
【ラブコメ 官能小説】

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赤い口紅を引いた恋人-7

現金にも加奈の涙は止まり、日が差すようにぱぁっと明るくなったのがわかった。

「も、もう一度言ってください」

「や、やだよっ!」

「じ、じゃぁっ 私のことっ す、好きですか?」

「…………ああ」

「『ああ』じゃなくてっ!?」

嬉々として俺に詰め寄る加奈。
言わないつもりだった言葉、いや、いつかは言おうと思いながらもずっと言いそびれていた言葉。
結局、言葉にしてはいないと怒られそうだけれど、
残念ながら俺としてはすべてをさらけだしたも一緒だ──もう大人のフリなんて出来ない。

「あんっ やっ ちょっと…… だめですって!ちゃんと言ってくれなきゃ…… はぁっ」

俺は右手で加奈の身体をまさぐりながら、
ゆっくりとベッドに押し倒し、その身体を抱きはじめた。

「ず、ずるいですっ んんっ わ、私はちゃんと言ったのにっ あぁっ」

ビクビクと身体を震わせながら、嬌声交じりにいまだ俺を問い詰める加奈。
形になんかこだわらないなんて言ってたくせに、
コイツもまたどこか必死で大人のフリをしていたんだろうか。

「さすがにもう黒の他人とは呼べないな……」

突然、そんなことを呟く俺に、ぷっくりと頬を膨らませながら加奈はこう言った。

「お母さんと一緒にしないでくださいっ」

比べろとか負けたくないとか言ってたくせに勝手なやつだ。
いや、もしかして負けたくないから一緒はイヤと言ってるのだろうか?

俺は加奈に唇を重ねると、まるで剥ぎ取るように、
何度もその赤い口紅を舌で舐め取っていった。

「……似合わない……ですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

「あ、昔を思い出すとか?」

「てめぇ、喧嘩売ってんのか?」

くすくすと笑いながら俺を見る加奈。
もちろん、そんなつもりじゃないことくらいわかってる。

「……好きっ」

「はぁ?なんだよいきなり……」

本当は恐いのだろう。色々と不安なのだろう。
その相手が誰よりも身近な存在だったがゆえに、その心理は俺にはきっと一生掴みきれない。

「私、龍二さんがだぁ〜い好きです!」

「…………るせ!知ってるよそんなことはっ お、俺だって……」

でも、だからこそ、俺に出来るのはこの手でしっかりと加奈を抱き、
一秒でも不安を忘れさせることしかないのだ。
信じるも信じないも加奈しだいだけど、
そのためなら、それで何かを変えられるのなら、どんなに恥ずかしいことでも言ってやるさ。

「…………俺だって加奈が、大好きなんだよっ」

赤の他人として出会い、黒の他人として身体を重ね合った日々。
これからは何色になるんだ?なんて考えてもしょうがない。
だってもう俺たちは、他人ではいられないのだから。


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