Portrait-5
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―――それから半月後、
―――サウスフィガロ中心部
―――アウザー所有の個人美術館
「あなたは・・・・・」
「お久しぶりでございます、王妃・・・いえセリス様。
お元気でいらっしゃいましたか?」
美術館入り口から正面玄関まで案内され、展覧室の入り口まで来たセリス。
そこで頭を下げてくる男の姿を見て、
さすがのセリスも一瞬身体が硬直する思いだった。
男は以前夫エドガーの依頼で、官能的なドレスを身に付けたセリスの肖像画を描いたフィガロ王室とは馴染みの画家であった。
彼が描いた肖像画は、
その女らしさのせいもあり一般の目に触れることなく今も王室の倉庫の奥に仕舞われている。
その女らしさを発露させたのは、
その時男がセリスに施された“巧みな技”のせいでもある。
それはセリスがその時まで感じたことのない体験。
―――――それ以降セリス自身がその事を忘れかけるくらい彼とは会っていなかった。
それがまさか、
フィガロ王国ではなく訪問先の地で再会することになるとは思いもしなかったのだ。
「どうして、この美術館に・・・」
「フィガロ王国同様、ジドールの富豪の方々とりわけアウザー様にはご懇意にさせていただいております。
現在はアウザー様のご依頼の作品作成の為、
特別にこの美術館の一角に部屋を頂いている次第です。
本日はアウザー様の命により、美術品についてセリス様の案内を命ぜられました。
いたらぬ身ですが、どうぞ宜しくお願いいたします」
そう言って頭を下げてから再びセリスの顔を見つめてくる画家の視線が、
セリスの脳裏にあの日の情景をまざまざと思い出させることになった。
今日のセリスの出で立ちは無論のこと、あの時のような際どいドレスではない。
黄色の長ズボンに、腰には護身用の剣。そして全身タイツという、かつてルーンナイト時代と同じ動きやすく身軽ないでたちであった。