Portrait-4
そう、
男が女に向けて放つ好奇の視線に対して――――
「・・・そういえば近頃サウスフィガロに美術館を設けたそうだな」
エドガーの何気ない言葉にアウザーは手にしていたグラスの中身を一息に煽ると、顔を僅かに赤らめながら口許に満面の笑みを浮かべた
「美術館って、そこまで大げさなものじゃないさ。あくまで個人的な美術品の保管庫。無論同好の者にしか見せるつもりはないよ」
「だがお前のことだ。相当な代物ばかりを揃えているんだろう?」
「まあな。これでも親父以上に美術にはうるさいつもりだ」
ここでアウザーは初めてセリスの方に顔を向け、
正面から微笑みと
「エドガーは勿論セリス様も是非いらしてください。
エドガーが公務で忙しく相手をしてくれない時など、暇潰しをするにはちょうど良いと思いますよ」
「おいおい、私はいつでもちゃんとセリスの相手はしているぞ」
「本当かな、それは。ハハハ・・・・」
「ははは・・・・」
冗談まじりに笑いあう2人をよそに、
セリスはアウザーの招きに少なからず興味を抱いていた。
フィガロ王妃になって以来、王家秘蔵の美術品を目にする機会が増え、以前よりも美術というものに関心が深まり(個人的な感想だが)目も肥えてきたと思っていたところだったのだ。
「そうですね・・・今度一度足を運んでみようかしら」
「おぉ、それは嬉しい。お待ちしていますよ。
・・・だが、この場限りの社交辞令では困りますよ。
お忍びでも結構ですから、是非来てください」
笑いながらも、その表現を強調したいかのように繰り返すアウザー。
セリス自身ほろ酔い気分のせいもあり、さすがにそこに隠された“思惑”にまで気づかなかった。
そして
再び視線をエドガーの方に移し互いに酒を注ぎ合いながら別の話題で盛り上がる
アウザーの目の奥に妖しい光が宿り、
口許には薄ら笑いが微かに浮かんでいることにも―――――