Portrait-18
「それでは、私はこれで・・・・」
「うむ・・・・・・」
セリスの眼前で交わされる2人の会話。
ここで画家は半分名残惜しそうに横目でチラリとセリスの方に視線を走らせると、
そのままゆっくり上体を倒してアウザーに対して深々と礼をする。
「ごゆっくりお召し上がりください・・・・」
―――カッ、カッ、カッ・・・・・
――――ガチャッ・・・・
―――パタン・・・・・
画家の背後で静かに部屋の扉が閉じられる。
扉越しに室内にいるセリスと領主の会話が微かに聞こえてきた。
―――ジャラ・・・・・
セリスの首輪についている銀の鎖が触れあう音。
『・・・もう周囲の建物には人払いをさせてありますこで邪魔するものはおりません。
どうぞ心配なきよう』
『や、やめて下さい。こんなこと、夫が許すと』
『残念なことに、エドガーも私も女と芸術については妥協することがない性分でしてな』
『!!!』
『・・・・セリス殿、あの画家から色々話を聞き何度も紫のドレスを身に付けた貴女の絵を見ましたが、
やはり実際の貴女の方が断然素晴らしく美しい・・・・・・』
ソファの上で何かが動き、ソファのスプリングが激しく軋む音。