君と僕と友達と-4
店の中に入ると、スープの湯気や餃子を焼いたときの油を含んだ煙で、ムンとした空気が鼻をかすめた。
8時近くになっていたからか、店の中はガラガラで、店主はテレビでやってるナイター中継をボケーッと眺めていた。
「せっかく奢るってのに、こんな所でいいのか?
もっと高いもんでもいいんだぞ?」
店の奥のカウンター席に座った久留米は、隣に座る芽衣子に向かってそう言った。
おそらく彼女が遠慮して、安いラーメン屋を選んだんではないかという懸念を抱くような表情だった。
「うん、ラーメンの気分だったから」
しかし芽衣子が首を振って久留米にニッコリ微笑むと、その表情はみるみるうちに緩み、少し赤くなっていった。
コイツは芽衣子の前では、いつもこんな風にてんでだらしない。
だからといって、コイツは決して奥手なわけじゃない。
むしろ、いつも俺と街で可愛い女を見つけてはナンパしたり、一緒に合コンに足繁く通うような奴だった。
まあ、俺達の名誉のために言っておくが、芽衣子と知り合う前の話である。
そんな女好きな久留米を腑抜けにさせてしまった芽衣子との出会いを、俺は思い出していた。