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シテはいけないことをスルということ
【その他 官能小説】

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『嘘つきは凌辱のはじまり』-5

「ひい、あ、あん……」

 黒い注射器が、女性器を満たしていく。

 めり込んで、粘膜を刺激しながら、それは子宮にまで到達した。

「あふん……」

 アズマと一つになっているという感覚。
 夫を裏切ったという背徳──。

 私という人間が壊れた瞬間だった。

 テーブルが軋んだ。
 彼が腰を振っているのだ。

 結合した部分がリズミカルに音をたてて、二人の体液を飛び散らせる。

「あっ、ひっ、あっ、うん、はっ、あっ……」

 レイプされているのだから、快感なんて感じている場合じゃないのに、私はこの行為の味に酔っていた。

 夜明けまでこのままでもいいと思った。

 今まで経験したどのセックスよりも、女として扱われている気がする。

 彼の腰つきが速くなると、私もいよいよ逝きそうになる。

「あん、いく」

 甲高い声とともに、私の中に彼の精液が注がれた。

 ペニスが脈打ちながら飛び跳ねて、精巣の中身を子宮へと運んでくる。

 生温かくて、汚らしくて、素敵なものが体内に流れ込んでくるみたいだった。

「いい顔してるよっ」

 アキラ氏に言われるまで気づかなかった。
 私の表情はゆるんでいた。

 アズマの巨体が体位を変えて、別の角度から私を貫いてくる。

 何度も、何度も、突入してくる。

 逝っても、逝っても、きりがない。

 子猫のような拙(つたな)いフェラチオをして、見せ物のようにバイブで犯されて、アズマの肉体にレイプされる。

 慣れないオナニーを強要されもした。

 「おまんこ」なんて卑猥なフレーズを、泣きそうな声で言ったりもした。

 人妻の危険なアルバイト。
 蓋を開ければこんなものだ。

 終始無言のアズマは、行為の合間に精力剤をたらふく飲んで、私のことを朝まで犯しつづけた。





 控え室で私服に着替えると、私は建物を出た。
 外はすっかり朝になっていた。

 今日は何月何日何曜日だったろうかと、キャラクターの手帳を開く。

 赤い目印がつけてある日にちには、すでにアルバイトを入れてある。

 次回は月曜日の夜か──。

「新井理沙(あらいりさ)ちゃん、またよろしく頼むよっ」

 自称、敏腕プロデューサーのカツラギアキラ氏は、帰りがけの事務所で私にそう言ってきた。

 断るつもりでいたけれど、会社や夫に告げ口されることを考えると、引き受けないわけにはいかなかった。

 それに、めくるめく快感が尾を引いていて、私に「イエス」のサインをさせたのだった。

 次回の分の『嘘』もすでに用意してある。
 会社の女の子が仕事でミスをして、その報告書を徹夜で手伝うという、取って付けたような『嘘』。

 たぶん夫は疑わないと思う。

 さてと──。

 パーキングから車を出して、コインランドリーを目指した。
 着衣にアズマの痕跡がないともかぎらない。

 今着ている服は、着替えの分の洋服である。

 ハンドルを握ったまま、ふと歩道を見ると、ダンボール箱を抱えた男の子が歩いていた。

 引っ越しの途中だろうか、必死の形相で早歩きをしている様子が、イタイ。

 しかしこのあと私は、その彼と、何度か遭遇することになるのだが──。


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