『嘘つきは凌辱のはじまり』-5
「ひい、あ、あん……」
黒い注射器が、女性器を満たしていく。
めり込んで、粘膜を刺激しながら、それは子宮にまで到達した。
「あふん……」
アズマと一つになっているという感覚。
夫を裏切ったという背徳──。
私という人間が壊れた瞬間だった。
テーブルが軋んだ。
彼が腰を振っているのだ。
結合した部分がリズミカルに音をたてて、二人の体液を飛び散らせる。
「あっ、ひっ、あっ、うん、はっ、あっ……」
レイプされているのだから、快感なんて感じている場合じゃないのに、私はこの行為の味に酔っていた。
夜明けまでこのままでもいいと思った。
今まで経験したどのセックスよりも、女として扱われている気がする。
彼の腰つきが速くなると、私もいよいよ逝きそうになる。
「あん、いく」
甲高い声とともに、私の中に彼の精液が注がれた。
ペニスが脈打ちながら飛び跳ねて、精巣の中身を子宮へと運んでくる。
生温かくて、汚らしくて、素敵なものが体内に流れ込んでくるみたいだった。
「いい顔してるよっ」
アキラ氏に言われるまで気づかなかった。
私の表情はゆるんでいた。
アズマの巨体が体位を変えて、別の角度から私を貫いてくる。
何度も、何度も、突入してくる。
逝っても、逝っても、きりがない。
子猫のような拙(つたな)いフェラチオをして、見せ物のようにバイブで犯されて、アズマの肉体にレイプされる。
慣れないオナニーを強要されもした。
「おまんこ」なんて卑猥なフレーズを、泣きそうな声で言ったりもした。
人妻の危険なアルバイト。
蓋を開ければこんなものだ。
終始無言のアズマは、行為の合間に精力剤をたらふく飲んで、私のことを朝まで犯しつづけた。
*
*
控え室で私服に着替えると、私は建物を出た。
外はすっかり朝になっていた。
今日は何月何日何曜日だったろうかと、キャラクターの手帳を開く。
赤い目印がつけてある日にちには、すでにアルバイトを入れてある。
次回は月曜日の夜か──。
「新井理沙(あらいりさ)ちゃん、またよろしく頼むよっ」
自称、敏腕プロデューサーのカツラギアキラ氏は、帰りがけの事務所で私にそう言ってきた。
断るつもりでいたけれど、会社や夫に告げ口されることを考えると、引き受けないわけにはいかなかった。
それに、めくるめく快感が尾を引いていて、私に「イエス」のサインをさせたのだった。
次回の分の『嘘』もすでに用意してある。
会社の女の子が仕事でミスをして、その報告書を徹夜で手伝うという、取って付けたような『嘘』。
たぶん夫は疑わないと思う。
さてと──。
パーキングから車を出して、コインランドリーを目指した。
着衣にアズマの痕跡がないともかぎらない。
今着ている服は、着替えの分の洋服である。
ハンドルを握ったまま、ふと歩道を見ると、ダンボール箱を抱えた男の子が歩いていた。
引っ越しの途中だろうか、必死の形相で早歩きをしている様子が、イタイ。
しかしこのあと私は、その彼と、何度か遭遇することになるのだが──。