『嘘つきは凌辱のはじまり』-3
「警察は困るなあ。だけどね、君の会社に電話をかけるとか、ご主人に助けを求めるとか、それだったら別にかまわないんだよ」
「そんなの、できるわけが……」
「できるわけないよねえ。アルバイトのことがバレたら、困るのは君なんだもんねえ」
低いトーンでしゃべりながら、アキラ氏が右手を上げる。
私の目がそこに釘付けになる。
彼の右手にあるもの、それは私の携帯電話だった。
「これは僕が預かっておくから、君は君のやるべきことをこなしたまえ」
「返して!」
「あんまり騒がないほうがいいよ。喉は声優の命だからね」
「お願いします。返してください」
「一肌脱いでくれるなら、ちゃんと返すよ。まあ、一肌だけで済むかどうかはわからないけどね」
悔しくて歯を食いしばると、奥歯の詰め物が嫌な音をたてた。
打開策はない。
「わかりました……」
いじけたように言うと、しぜんと涙がこぼれた。
見え見えの罠に引っかかった自分が悪いのだ。
「泣いた顔も可愛いねえ。雰囲気、出てきたよっ」
アキラ氏の一言をきっかけに、アズマが私の手を引く。
彼の手汗がべたべたして、気持ち悪いったらない。
首をすくめたまま、私はマイクに寄った。
背後にはアズマがスタンバイしている。
「早織になったつもりで、よろしく頼むよっ」
すぐにアニメーションが再生される。
美人OLの早織が凌辱を受けるのと同時に、私のお尻に触れるものがあった。
「ひゃんっ」
腰を逃がす私。
そこへアズマの手が追ってくる。
「いやっ」
陰湿な感触が、お尻を中心にむずむずと這いずりまわる。
スカート越しとはいえ、彼の体温さえも感じられる。
最初は穏やかだった手つきも、巧みなテクニックを駆使しながら、しだいに大胆なものへと変わっていく。
お尻の割れ目に中指を感じると、私は憂鬱な声を漏らした。
私の声は、早織の声。
熱のこもった凌辱シーンがつづく。
「さっきより、ぜんぜんいいよっ」
アキラ氏の合いの手が、とってもウザい。
それ以上にウザいのが、アズマのこの手だった。
果物の熟れ具合いを品定めするようなソフトタッチ。
かと思えば、腰骨から脚までのスロープを何度も往復する、的確な愛撫。
お尻に寒気を感じる。
「もう、やめて、いやあ……」
べろん、とスカートを舐め上げる手のひらが、今度は下着を摘み食いする。
探し物でもするように、縦横無尽に動きまわるアズマの手指。
無駄がなく、骨太な感触がある。
なんとなくヤバい予感がしてきたとき、彼の手が下着のフロントへまわり込んだ。
「やんっ」
とっさにしゃがむ私。
たった一秒間ほどだったけれど、確実にあそこを触られた。
しかも初対面の男に……。
モアイ像みたいな大男に……。
「リアルだねえ、フレッシュだねえ」
カツラギアキラ一人だけが、手に汗握っている。
落ち込んでいる暇は私にはなかった。
ショベルカーみたいなアズマの腕が、私の体をひょいっと立たせると、羽交い締めの恰好で痴漢行為を再開させる。
遠慮なくといった感じで、私の胸と股間をまさぐってくるのだ。
「いやあなあ、やなあ、いやなって、ななあ……」
私の発音もおかしくなる。
いくらか抵抗しようとは思ったが、彼はびくともしなかった。
がんじがらめの不利な状況なので、上も下も出血大サービスを強いられている。
さすったり、こすったり、揉んだり、なぞったり、圧(お)したり、挟んだり、転がしたり。
それらすべての刺激が、このかわいそうな人妻の肌を、絶妙な匙加減(さじかげん)で汚していく。
いやだ。
いやいや。
ほんとうに、いや──。
もはや私は声優ではなく、ただの風俗嬢みたくなっていた。
制服がはだけて、ブラジャーを引きちぎられると、アズマが私の胸に吸いついてきた。
「いやあっ」
タラコみたいな唇のあいだから、これもまたタラコみたいな舌が伸びて、私の乳首を舐めてくる。
じゅぱっ、じゅぱっ、と強烈に、ついでにいやらしく、乳房の先端のアセロラを吸引する。
「やだあ、こんなの、ああんっ……」
「絶好調だね。君を採用して正解だったよっ」
スケベなアライグマが、高評価を下してくれている。
ちっとも嬉しくありません──。
そうやって心だけは反抗的に塞いでいても、体の調子はどんどん狂っていく。
乳首はかたく起って、あそこはぐっしょりと濡れている。
もうだめだと思った瞬間、体がふわっと浮いて、アズマに抱きかかえられた私は、空中でM字に開脚していた。
いつ脱がされたのか、ショーツさえもなくなっていたのだ。
だからもう局部を隠すこともできない。
「ブラボー」
アキラ氏が奇声を発するのと同時に、私の中に何かが入ってきた。
「ああ、うう、うんん……」
アズマの指が、膣に挿入されていた。
もっと深く、さらに深くまで、太くて長い指が入ってくる。
「……ああ……い……やあ……あ」
頭の中が真っ白になって、体内の熱が上がるのがわかった。