『星空の下で逢いましょう』-3
性行為によって感染する性病は無数にある。
とまあ、相手もなしにそんなおやじ臭いことを並べ立てても、子どものいない自分には関係のないことだ。
僕はふたたび二階へ上がり、人間観察を再開した。
天体望遠鏡を覗くと、先ほどの三人はまだそこでぐだぐだと何事かをやっていた。
様子が変だと思うまでに、そんなに時間はかからなかった。
おもちゃの着せ替え人形みたいに手足を露出した女子高校生。
そこに二人の男が手を出し足を出し、少女のことを携帯電話で撮影したりしている。
あの子はレイプされている──僕にはそう見えた。
にたりと笑う彼らにされるがまま、少女の顔は歪みに歪んで、胸や股間へのいたずらに翻弄されている。
今すぐあの子を助けなくては──。
そう思い立った直後、僕は考えをあらためた。
たとえば警察に通報したとして、レイプの現場をどのように目撃したのかと訊かれたとする。
そしたら僕はこう応えるしかないだろう。
「その部屋を天体望遠鏡で覗いていました」と。
だめだ。彼女を助けるのと引き換えに、自分のした迷惑行為を自白することになる。
ほかに手はないものかと考えてみても、目の前の光景があまりにも凄惨で、なおかつ淫靡な月明かりの照り返しにより、僕の思考を狂わせている。
それじゃあどうするか。
あとは己の欲望にまかせて、少女の変わりゆく様を存分に楽しめばいいのではないか。
少しくらい良心を痛めたとしても、僕はすでに取り返しのつかないことをしているのだから、あとはなるようになればいい。
自虐的な笑みが浮かんでいるのを僕は自覚した。
なおかつ視線の先では、青春真っ只中のあどけない少女が、その純真な体を狼たちに貪られているのだ。
カーテンを閉めていないのは、彼らに油断の気があるのか、もしくはこのシチュエーションを彼女に思い知らせた上で、絶望的な主従関係をすり込んでいるのかもしれない。
生のレイプである。
シネマスクリーンで鑑賞したり、プレーヤーで再生するのとはわけが違う。
事実、可愛らしい制服姿のその女子高校生は、手足に粘着テープのようなものを巻かれたまま、猥褻な行為に涙を呑まされている。
乳房の大きさは大人ほどではないが、彼らを悦ばせるだけの量は十分にあるようだ。
甘いものには目がないといった感じで乳先を口にふくんだり、脂肪の触り心地を指に記憶させているみたいだ。
夢なら覚めるなと、彼らは願っていることだろう。
彼女にしてみれば、夢なら覚めて欲しいと祈っているに違いない。
未だ体の結合には至っていないようだが、彼らの指が出入りしている部分を凝視してみれば、冷や麦ほどの白い糸を引く様が明らかにわかる。
二人の男が代わる代わる責め立てるものだから、興奮の熱気が窓の縁を曇らせている。
あの部屋には一体どんな匂いが充満しているのか、それが気がかりでならない。
いいや、そんなことはどうでもいい。
もっと素晴らしいイリュージョンを僕に見せてくれ。
少女の髪が舞い、スカートが舞い、体液が舞っている。
男の一人がクンニリングスを披露する。
控え目な反応を見せる彼女だが、その口にはもう一人の男のペニスが押し込まれ、悶絶する。
しなやかに捻れる少女の体の柔らかさといったら、何にも例えようがない。
どんなポーズにも耐えられる、万能の肉体である。
もっとも敏感な部分を執拗にもてあそばれているうちに、彼女の顔にも赤みが差していく。
男の指に代わって、妖しい光沢をまとうバイブレーターが出現した。
少女の割れ目が儚く口を開けている。
愛液も申し分ないだろう。
それは間もなく静かに始動して、ヘッドに回転が加わると、花びらの中心にずぷりと挿さった。
子宮に迫るほどの大きさがあったはずだ。
それが今は根元しか見えていない。
清純な女子高校生と、いやらしいバイブレーター。
けして交わってはならない二つが、こうやって生々しく交わっているのだ。
抜き差しが速まるにつれて、彼女の瞼がうっとりと閉じてくる。
眉間に皺を寄せては弛め、興奮の坩堝(るつぼ)と化した密室で最初に絶頂を迎えたのは、少女だった。
あんなに溌剌(はつらつ)とはじけていた手足が、今ではすっかり大人しくなってしまって、ひく、ひく、ひく、と痙攣を起こしている。
ゴージャスな大輪の花ではなく、水辺に咲いた可憐な草花のように揺らめくその姿。
ただただ、ため息が出る。
濡れた目頭を指で拭いながら上体を起こせば、股間に突き刺さる玩具はなおも少女をじめじめと犯し、彼女はその残酷な現実を見てふたたび首を振る。
いやだ、やめて、ゆるして──彼女の口がそんなふうに動いていた。
プリーツスカートの中の尻が揺れて、バイブレーターをくわえた少女の器がまた真新しい愛液を出す。
泉のように、聖水のように、その神秘的な場面が僕の性具をぐっと膨らませた。
いっそのこと、この天体望遠鏡を彼女の体内へ潜り込ませて、欲望のままに診てしまいたい。