記-8
長いホームに、長い車両が連なって、長い人の行列ができていた。
発車時刻までには、まだ数分ある。
雑踏の中、携帯電話をのぞいてみる。
一通のメールが届いていた。
『無事に生まれました』
そうか──。
私たちの子どもが、無事に生まれたのか──。
ほっと、ため息が出た。
誕生の瞬間には間に合わなかったけれど、母子ともに無事でなによりだ──。
父親としての自覚が芽生える、その脈動が体中をかけ巡り、うっかり涙ぐむ。
私たちの元に、生まれてきてくれて、ありがとう──。
妻にかけた電話口で、互いの言霊(ことだま)をつむぎ合った。