記-43
気がつくと、私は、通路側の席に座ったまま、子育てのしおりを読んでいた。
そして、窓側の席にいる女の子は、着衣に乱れもなく、気持ちよさそうに眠っている。
妄想に入り込む前と、そっくりそのままの光景に、なんて馬鹿なことを考えていたのだろうと、思わず反省した。
しかし、どうしてだろう。
あれだけのことを妄想していながら、私の体は、何の反応も示さなかったのだ。
隣の彼女は、私の人格を信用して、すやすやと寝入っているのだと思う。
ならば私は、彼女のボディガードにならなければいけない。
その気持ちは、いつしか、自分の娘への思いと重なっていく。
定年退職などない、たった一人のボディガードである。