記-32
「ここで一緒に、思い出をつくろうか?」
応じるわけのない下品な台詞を、延々とささやく男。
彼女の顔は、耳まで赤い。
移動をつづける空間の、そのエアポケットで、開花させてはならない蕾が、ほころびはじめている。
「こういうの、されたことないのかな?」
よしよしと、彼女の性器を撫でる、男の中指。
クリトリスを掻いてから、彼女の反応を見て、ヴァギナの入り口で指を止める。
「入れるよ?」
宣告した直後、男の中指が、膣内に挿入された。
「…………あ」
震える吐息を漏らしたあとに、体をよじる彼女。
ゆるいジャムのような感覚が、男の指にまとわりついている。
賞味期限もみじかい。
すぐに食べてしまわなくてはならない。