記-26 腕組みをして、肘で距離感をつかむ。 他人なのか、顔見知りなのか、二人の関係を知る者は、おそらくまわりにはいない。 もっと腕を寄せて、彼女の産毛に、男の産毛が触れる。 一瞬だけ反発する、肌と肌。 それでも彼女は、目を覚まさない。 野獣のような男の心音が、穏やかな彼女の心音を、呑み込もうとしている。