記-17
デッキから戻った時から、ずっと気になっていたことがある。
彼女のテーブルの上に、紙パックのジュースが置いてあるのだ。
飲みかけなので、ストローがささったままになっている。
私という男は、情けないことに、あらぬ妄想を描いてしまった。
そのストローは、いつでも手のとどく位置にあって、隙さえあればシェアできてしまう状態なのだ。
仮に自分が、手癖の悪い、卑しい男なら、妄想の範囲を逸脱した行動に出ていたことだろう。
私なら大丈夫だ──自分にそう言い聞かせた。