記-15 「乗車券を拝見します」 右利きの私は、自然と右手で切符を差し出した。 ふたたび右手で受け取ると、次は彼女の番である。 「お願いします」 礼儀正しく、彼女はそう言った。 今時の若者とは思えない、そんな振る舞いが、彼女の内面を映し出す鏡だと知る。 しかも、毎日欠かさず、よく磨かれた鏡である。 日本の未来も、そんなに捨てたものではないなと思った。