和州記 -茸奇譚--3
自ら腰を動かしても良いが、まだ理性のある竜胆の自尊心がそれを許さなかった。
が、それももう限界に近い。
「言いたいことがあるなら、早よ言いや」
耐えかねて、遂に竜胆はその言葉を口にする。
「も、もっと…」
「もっと、何や?」
分かっているくせに意地悪く聞き返す。
「…突いて…くれ」
「そないな口の利き方で、俺が素直にくれてやると思とんのか?もっと悲しげに乞うてみぃ」
「突いて…下さい、お願い…」
「は!」
一紺は嬉しげに、だが相変わらず意地の悪そうな笑みを浮かべたままで言った。
「突いてやってもええ」
一紺は竜胆から小刀を引き抜いた。
「ただし、その代わりちゃんと奉仕すんのやぞ」
小刀を、突き挿す。
長いそれは竜胆の子宮まで届く。ぐりぐりと、抉るように一紺は小刀で竜胆の中を撹拌した。
淫猥な音は空気も混ざったようなぐじゅ、ぐちゅと響く。
「や、んぁああああ――ッ!!!」
泣き叫ぶような嬌声と共に、竜胆は果てる。
一紺はどかりと床にあぐらを掻き、竜胆に四ん這いになるよう指示する。
ぎこちなく竜胆はそれに従った。
「早よ、初めや」
しかし竜胆は一紺を睨み付け、ただ黙っていた。
(これが…一紺?悪ふざけにしては…)
あまりの人格の違いに、彼女は眉根を寄せる。
(人格が変わる…?一紺だけ、何か変なものでも食べたのか?…一紺だけ…?)
竜胆ははっとする。
(一紺だけ、茸を食べた…)
そうしているうちに、一紺は痺れを切らせてしまったようだ。
「おい、『奉仕』の意味くらい知っとんのやろ?」
「あうッ!」
彼はあぐらを掻いて竜胆の行動を待ったが、いつまで経っても始めようとしない彼女の髪を引っ張り、言った。
「ええか、奉仕てのはこうやんねん。しっかり覚えんのやぞ」
言うなり自身のものを竜胆に咥えさせた。
「んぐッ」
口の中の異物感に顔を歪ませる。
「舐めろ、吸え、咥えんのや。よう出来たらくれたるさかい」
竜胆は一旦口からそれを引き抜いてぎこちなく言われるがままに先端を舐めた。
ちゅ…ちゅば…ちゅ、と音は竜胆の耳元で聞こえるような気がした。
表情と同じく、やはり竜胆の口戯はぎこちなく、拙い。
いつもの一紺との逢瀬では、口戯など強要されないからだ。
竜胆の頭を抑えたまま、がくがくと腰を揺する一紺。
苦しさのあまり竜胆は一物を舌で押し出そうとするが、逆にそれは一紺を高ぶらせる。
「ッ、残こさんと、全部飲み!」
「んぅッ」
一紺が深く息をつき、微かな呻きと共にその欲望を竜胆の口腔内にぶち撒けた。
突然のことに竜胆は驚くが、何も言えずただ生臭いそれを飲み込むしかなかった。
口の端から流れ出す幾筋もの白と溢れ出た涙が竜胆の頬を伝い、落ちる。
ようやっとそれを燕下して彼女は口元を拭った。
しかし涙は拭っても拭っても止まらない。
ふと、一紺は哀しげな表情を称えて竜胆の頬に優しく触れた。顔を近付けてゆっくりと竜胆の頬を伝う涙を舐めとる。
擽ったさを感じながら、彼の見せた何とも哀しげな顔が目の前に迫るのを見つめる。
一紺は竜胆の涙を舐め終ると、にこりと少年のような笑みを浮かべた。
しかし無邪気とも言えるその笑みが、次の瞬間、邪気に満ちた歪んだものに変わる。