わりと近い未来の俺-7
「はぁ…… なんかっ はぁ…… ホントに犯されちゃったみたいな気分ですね はぁ……」
荒い息を吐きながら、照れくさそうにそんなことを言う加奈。
「俺はなんか…… 初めてお前を抱いた日のことを思い出しちまったよ……」
初めて加奈を抱いた日、酔っぱらって眠っていたふりをしていた加奈、
奇しくも身動き取れない今日の加奈とどこかダブってしまう。
加奈が犯されたんじゃない、俺が加奈を犯したんだ。
汚して、壊して、そんな自分に興奮して……
「あの日、私…… 起きてましたよ?」
「……知ってるよ」
「今日だって…… ちゃんと誰に抱かれたのかわかってます」
「……ああ」
俺は適当に相づちを打ちながら、加奈のアイマスクを取り、手首のテープをほどいてやった。
「あは、もうっ なんて顔してるんですか?」
「……え?」
加奈に言われてはじめて自分の浮かない表情に気づく。
適当な自分、おざなりな自分、臆病な自分。
そして、わかってる答えを見つけ出せないフリしてる──ずるい大人な自分。
「加奈?お、俺はさ…… その、俺だって──」
何を言おうかなんて考えていなかった。
ただ、どこか情けない自分を懺悔するように、
なんとなく口を開いてみたものの──やっぱりうまく言葉が出ない。
くすくすと笑う加奈。
そう言えば奈美子もまた、よく俺の顔を見て笑っていたっけ?
「龍二さん?私が抱かれたいのは龍二さんだけですからね?」
「……え?あ、ああ……」
「今までもこれからも…… 私は龍二さんに抱かれるのをいつも待ち望んでいます」
「…………加奈」
ピタリと寄り添っては、恥ずかしそうにその顔を俺の胸元に埋める加奈。
情けなくもいまの俺には、まだ、その身体を抱き締めるほか術を知らない。
いつか、ちゃんと言える日が来るのだろうか?
いや、その答えはきっと、わりと近い未来の俺が知っているような気がする。
ずるい大人をかなぐり捨て、無邪気な子供のような瞳で、
このもやもやとした気持ちを言葉に乗せて伝えたい。
俺も、俺だって、俺だって加奈が──