わりと近い未来の俺-5
「動ける……か?」
俺の言葉に黙って頷くと、ゆっくりと腰を前後に振りはじめる加奈。
自分の姿が見えないからか、いつも以上にその腰の動きは艶めかしい。
「すげぇ腰使いだな?誰にならったんだ?」
「……し、知りませんっ」
「もしかして浮気でもしてるんじゃ……」
「絶対にしてません!!!」
俺の言葉に被せるように間髪入れぬ返事。
加奈のこういうところが好きだというのもあるが、
反面、こういう時にしか不安を聞けない自分がちょっと情けなくも感じる。
「り、龍二さんこそっ 私と会ってない間に他の人と……」
「ないよ」
「……え?」
「過去はともかく、お前と会ってからは、お前以外を抱いた記憶はねぇよ?」
過去はともかく──な。
我ながらずるい言い方かもしれない。
けれど、さすがに歳の差十二年の歳月は簡単には埋められない。
いちいちそのすべてを伝えるわけにはいかないし、
もちろん奈美子とのことなど──言語道断だ。
「そ、そうなんだ……」
「なんだよ?そりゃ俺にだって過去くらい……」
「ち、違いますっ 過去なんて…… 過去なんてどうでもいいんですっ」
「……あ?」
「だって大事なのは…… 今であり未来なんですから……」
素面ではとてもじゃないが聞いてられないセリフ。
でも、なんとなく加奈の言わんとしてる意味はわかるし、俺もまたそう思っている。
「そか…… なら、浮気なんかした日にゃ大変だな?」
「あは、そうですね…… でも……」
「でも?」
「……それでもきっと私は、龍二さんのそばから離れられませんよ」
そう言うと加奈は身体を前に倒しては、そっと探るように俺の唇へとキスをしてきた。
「馬鹿な女だとは思っていたが、ここまで馬鹿だと救いがたいな……」
「ひ、ひどいですっ!」
「ったく、お前には独占欲ってのはないのかよ?」
逃げないように、逃げられないように繋ぎ止めてる独占欲の塊のような俺が問う。
「独占欲ですか?それくらい私にだってありますよ?」
「だったらさ……」
「でもっ 黒の他人の私が……言っちゃだめでしょ?」
そう言うと加奈はにっこりと微笑んだ。
幸い目はアイマスクで見えないけれど、きっとその目は笑っていないはずだ。
「…………やめようぜ?こんな時にこんな話」
「あは、そうですね?あっ んんっ」
俺は誤魔化すように大きく腰を突き上げた。
加奈の好きな奥に届くくらい、何度も激しく突き刺すように。