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パレット
【純愛 恋愛小説】

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PINK color-3




言ってしまった・・。美桜が好きだと。
言うつもりなんかこれっぽっちも無くて、ただ美桜の身体を心配しただけだったのに。
俺の口から、迷うことなく「好き」という言葉が出てしまった。
アイツの傍に居たいから。アイツの幼馴染みで居たいから。アイツに、拒絶されたくなかったから、伝える気が無かったハズなのに。

美桜・・何も言ってくれなかったな。
当たり前か。俺のこと、恋愛対象とかそんな風に見てなかったんだろうから。


「・・・朝、か・・」


あれから、早いもので一週間が過ぎてしまった。
美桜との連絡はしていない。ただイラストだけはいつも通りバイク便で送られてきた。
完璧な程の出来上がり。これも、いつも通り。
アイツは・・いつも通りにしている。・・俺だけが、引きずっている。
俺の告白は、無かったことにされたのだろうか。

だるさを訴える身体を起こして、簡単な朝食を作る。正直、食欲なんて無いけど食べておかないとますます身体が辛くなるだけ。
テレビをつけると、いつも見るようなニュース番組じゃないことに、今日は日曜日なんだと気付く。
昨日まで美術商の仕事が立て込んだから日付感覚が無かった。

特にすることも無いし、どうしようか。

「・・・美桜、ちゃんと飯食べてるかな・・」

・・だめだ。油断すると、すぐ美桜のことばかり考えてしまう。
そういえば・・こういう休みの日はいつも朝食とか作りに行ってたよな・・。
別に先週までしていたことなのに、懐かしく感じられる。
あぁ・・もう、俺はヘタレ過ぎる・・。告白の返事を聞くどころか、あんなにやりたかった世話焼きさえ出来ずに自分の家に篭っているのだから・・。

《〜♪〜♪〜♪》


自己嫌悪に陥った時、テーブルの上に置きっぱなしにしていたケータイが電話を告げて高らかにメロディーを鳴らした。
手を伸ばしてケータイを開く・・前に少しの躊躇い。
もしかしたら、美桜かもしれない。
そうだったらいいと、勘弁して欲しいという相反する気持ちを抱えながら、そっとケータイを開いた。名前を見た瞬間、勢い良く電話に出た。


「・・・なんですか、朝っぱらから。恭弥先輩!」
『なんでそんなに機嫌悪いんだよ、お前』

悪態をつくと、電話口から聞こえるのは、これで間違いなく女を落としているであろうハスキーボイスの男の声。中学の頃から大学まで俺の二つ先輩だった人。

「別に何でもないです。ところで何の用ですか」
『つれないなぁ・・。まぁ、イイけどね。慧、今日時間ある?』
「いきなりか・・。ありますけど・・合コンとか嫌ですよ」
『アハハ、慧が合コン嫌なのは分かってるよ。猫ちゃんが居るからでしょ?』
「じゃあ、何ですか?」

そういうお誘いじゃないってことは、他に何かあるだろうか。

『ちょっと見てもらいたいモノがあるんだよね。まぁ、その前に慧の話を聞くよ』
「・・え?」
『・・声、震えてる。悩んでる証拠』
「あ・・・」

気付かなかった。精一杯、何でもない風を煽っているのに。
やっぱり、自分の中ではどうしても大きな事件で。無かったことになんてましてやできなくて。だけど、俺が美桜を好きだっていうことはこの恭弥先輩以外知らないことだから誰にも言えなくて。

『まさか猫ちゃんだけだと思ってる?幼馴染み。・・早くおいでよ、慧』
「あ・・」

恭弥先輩の声で電話は途切れた。
しまった、お礼言い損ねた・・でも、あとで話聞いてもらえるんだし、その時でいいか。

頼りになる幼馴染みの先輩に早く会いに行くため、ケータイを置くと俺は少し軽くなった腕を動かして覚めてしまった朝食を食べた。



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