君に気付いてもらいたい-7
今日も俺と園田はアパートに上がり込んで、芽衣子の帰りを待っていた。
俺はベッドに横になり、園田はそのベッドを背もたれにして小さく膝を抱え、真っ暗な部屋の中でボーッと過ごしていた。
これが、可愛い女の子ならすぐにいい雰囲気に持ち込むんだけどなあ。
俺は肘枕で園田の方を向いたが、窓から漏れる街灯に照らされている寂しそうな頭頂部を見ていると、ため息が出ずにはいられなかった。
しかし一週間もずっと一緒に居れば、奴との沈黙も次第に気まずいとも思わなくなる。
まるで長年連れ添った夫婦のような不思議な雰囲気で、俺達は玄関のドアが開けられるのを待った。
午後7時を少しまわった所で玄関の鍵がガチャッとまわった。
玄関の電気がパッと点いたので、俺はベッドからムックリ起き上がって部屋のドアをすり抜けた。
一人暮らしの家で飼われている座敷犬や室内飼いの猫は、こんな風に真っ暗な所で主人の帰りを待っているんだろうな。
なんてどうでもいいことを考えながら、尻尾を振る犬さながらに芽衣子の元へ駆け寄った。
少しやつれた顔の芽衣子が、誰もいない(俺と園田はいるけど)暗い部屋に向かって、
「ただいま」
とポツリと呟いたので、俺はいつも通りにっこり笑って
「おかえり」
と言った。