君に気付いてもらいたい-3
そう思って俺は何度か芽衣子を殺そうとした。
とはいえ、明らかに殺人事件のような殺し方だと、周りの人間に迷惑をかけてしまう。
俺が死んだ今、まず一番に疑われるのは久留米であろう。
芽衣子を寝取った久留米にははらわたが煮えくり返る思いだが、やはり腐っても友達、アイツには迷惑をかけられない。
では、自殺に見せかけて殺すのはどうか。
よく、ニュースでも自殺に見せかけた殺人のことをやっているが、結局バレて逮捕されているケースが多い。
おそらく用意周到な準備をしていたであろう犯人ですら、警察にバレるのだから、まして殺しの知識なんてない俺が上手く自殺に見せかけられるわけがない。
結果、殺人同様に周囲に迷惑をかけることになる。
それに生命保険を契約してから、二年以内に自殺してしまうと保険金は降りないと、保険会社のセールスレディだった俺の母の言葉が今になって思い出された。
去年、芽衣子は大学時代のサークルの先輩に頼まれ、生命保険に加入したことを思い出した。
若いうちにいい保険に入っておくといいのよ〜と、先輩の巧みなセールストークにのせられ、癌やその他の成人病まで幅広くカバーし、手厚い入院・通院保障が付いて、先進医療が受けられ、さらには死亡時1800万が降りるという素晴らしい保険に、芽衣子は加入していた。
もちろん死亡時の保険金の受取人は彼女の親なんだが、もし俺が自殺に見せかけて殺したのが万が一警察にバレなくて、自殺と認定されたら残された遺族に申し訳ない……と、心優しい俺はこの手段を諦めた。
となれば、芽衣子を事故死として殺すことがベストなのであった。