君に気付いてもらいたい-11
以前、久留米が俺に対してつかみかかってきたことがある。
度重なる俺の暴力に見かねた久留米は、俺をボッコボコに殴ってきた。
そりゃそうだ、好きな女が理不尽に痛めつけられてるのを黙って見過ごせるわけがないのだ。
すでにもやしっ子になっていた俺が、社会人になっても野球だ水泳だ筋トレだと、身体を鍛えまくっていた久留米のたくましい体にかなうはずがなかった。
地面に倒れた俺の襟刳りを掴みあげた久留米は、これ以上芽衣子に手をあげるなら彼女と別れろと迫ってきた。
あまりの痛さと、ここで首を縦に振らなければもっと殴られるという恐怖から、俺は“わかった”と言うつもりだった。
しかし、そんな俺をかばってくれたのは、他でもない芽衣子だったのだ。
芽衣子は“これがあたし達なんだから、久留米くんは口出ししないで”と横たわる俺の体にすがりつくように泣いていた。
そんな健気な芽衣子の姿を見て、もう二度と彼女に手をあげるのは止めようと誓うのだが、喉元過ぎればなんとやら……で、三日も経てば元の木阿弥になってしまっていた。
芽衣子の身体につけてきた数々のアザを見る度、始めの方こそ罪悪感で謝ってばかりだったけど、見慣れるとそれらはほくろやそばかすと何ら変わらないほど気にならなくなってしまった。