15-1
朝一でしっかり学校に行くと、教室の目の前で談笑している暁生と誠が目に入った。
なんとも言えない気持ちだが、しかしいつものように挨拶をして自分の席に着いた。
先の木下・高畠事件もそれなりに落ち着きを見せた頃合で、元自身も精神的に余裕が出来たためであろう。
クラスは、以前の退屈な日常に戻っていた。
鉄弥の後ろに座る。
本日提出分の課題をやり忘れて、隣の凜子に借りたノートを丸写ししている鉄弥。
それとなく話しかける。
典型的な噂好きの凜子に聞かれたら、面倒なことになるからだ。
「....てっちゃん。今、忙しいすか?」
「はい。とても」
「.....手が離せないですか?」
「はい。.....お前、課題やったの?」
「いや。あったことも知らない」
「げんちゃんみたいなのがいると安心するわ...」
「でさ、本題なんだけど」
「.....何関係?」
「オンナ」
それを聞いた鉄弥は、「よしっ」と言ってノートを閉じた。
明らかにまだ途中である。
「聞こう」
「.....てっちゃん、途中じゃね?」
「もういい。続けたまえ」
「.....あー、あのさ.....」
元は、昨晩のことを全て話した。
鉄弥はにわかには信じがたいという顔付きだったが、「伊織」という名前と例の写真を見てさらにバツの悪そうな顔をした。