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久しぶりの仕事に時間は足早に過ぎ去る。
あの二人も、手を繋いで店を後にした。
さっきまでの騒がしさが嘘のようだ。
BGMだけが響く店内でテーブルを拭いていると、店内のPCで先に写真をプリントアウトしていた佐原が苦い顔をする。
「.....連れって、誰のよ」
「サハさんも会ったことありますよ。暁生ってやつ」
「口調優しいやつ?かわいい顔してるやつだろ?」
「そうそう。最近彼女出来たって聞いたばっかりだったんすけど...」
「そういのヤだわぁ。愛理がんなことしてやがったら....相手殺しちまうな」
「サハさんだとガチっぽいからもう....」
「とにかく暁生がいたたまれねぇな」
「でもまだ黒かどうか決まったわけじゃないんで....」
写真を片手に家路に着く。
黒じゃなくても、灰の可能性もある。
別に男とサシで飲むこと自体は悪いとは思わないし、美帆がそうしても気に留めないだろう。
元自身も、女性と二人飲みなんてよくある話だ。
しかしあくまでも、そこまで。
楽しく飲んで食って、終わり。
先ほど見た伊織は、元の思うその線を越えている気がする。
元の足取りは重かった。