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この日も、客は耐えない。
久しぶりに立つ元を、笑顔で迎え入れる馴染みの客達。
最早どちらがお客様なのかも分からない。
この小さな箱は、元にとっては第二の家。
その家に、また新たな二人組の来客。
「おかえりー!」
佐原は、馴染みの客でも新しい客でも、構わず決まってお帰りと言う。
ポリシーなのだろう。
変かもしれない。
違和感を覚える者もいる。
しかし佐原は変えない。
元も釣られてお帰りと言うようになった。
ここで働き始めてから、「おかえり」という言葉が好きになった。
先程の来客のオーダーを取っている最中に、気付いた。
この既にほろ酔いの男女のうちの、女性。
見たことがある。
誰だったか。
「サハさん、あの二人って前からの客すか?」
「んー、最近かな。たまに来るけど」
「そうすか」
「気になるのか?」
「いや、あの女の人見たことある気がするんで」
「お前の昔の女とかじゃねーの」
「いーや、違いますね」
他人のそら似なんてよくあることだ。
向こうもこちらを気にしている様子はない。