第九話(最終話)-2
「そういうわけです。魁さま」
「わかったよ。語りたくないなら、それでいい」
思い出したところで、俺が優紀と恋人であることは変わらない。
「では。荷物をまとめ次第、すぐに出ていきますので」
そう言った観音が出て行ったのは、翌日のことだった。
荷物まとめるの早すぎ。
***
両親と放浪中の杏子を除き、家に残っているのは俺、優紀、愛ちゃんだけになってしまった。
「お兄さま……ついに、結ばれるときがきた。『私はお兄さまにベッドに押し倒され、そしてそのまま……』」
「愛ちゃん。そういう冗談はやめてくださいね」
「ごめんなさい優紀姐さんもう言いません」
変な茶番から入ったな……。
「愛ちゃんは、いなくなりませんよね?」
「……中学を卒業したら、杏子様のように、旅に出る予定です」
中学を卒業って。
愛は只今絶賛サボり中なのだが。杏子のせいで。
「旅って……お金は?あるのか?」
「現地で、なんとか」
「外国語は?」
「ぺらぺーら」
紙のように薄い無謀な旅になりそうだ。
というか、愛もハーモニーちゃんと同じで孤児院に預けられるんじゃ……。
「ちょっと杏子の馬鹿に電話してくる」
「たとえお兄さまでも、杏子様を馬鹿呼ばわりは許せません」
「わるい。とにかく電話してくる」
優紀と愛を残し、自分の部屋へ。
杏子に電話をかける。
『にゃっほー。マナカだよ♪一緒に帰ろ?』
「…………」
『怖いから黙らんでー』
思わず黙るようなことを言うからだろ。
「それより杏子。愛って、どうなってんだ?」
『どう、とは?体の構造?胸の形?』
見たのか?
生で愛の胸を見たのか!?
「なわけあるか。ほら、両親をなくしたとかなんとか言ってろ?」
『にゃー』
「にゃーじゃなくて。孤児、ってことだよな?」
『うん?ボクの養子にしたーにゃ』
「……え?」
『極秘ルートを使って。そうじゃにゃきゃ、養子にできなかったから』
なんだ極秘ルートって。
しかし聞くのは怖い。
「えっと、じゃあ愛はお前の娘ってことになってるのか?」
『そーにゃ。だから安心するんだ魁くん。愛くんと結婚してもボクと一緒にゃ』