第八話-1
「十代のお前たちに重大なニュースがある」
翌日学校へ行くと、朝のホームルームにて菜梨先生がローテンションでそんなことを言った。
「先生な……詐欺にあったんだ……」
「…………」
そんなこと生徒にぶっちゃけられても困る。
「せっかく……せっかく……!この苗字ともおさらばできると思ったのに……!」
悔しがるとこはそこなのかよ。
「あ、あの、元気出してください!」
そう言ったのは優紀だった。
「結城……まさかお前に言われる……とは、なん……だと……?」
言葉の途中で驚愕する菜梨先生。
その視線の先には、手を繋いだ一組のカップルの姿があった。
というか俺と優紀だった。
「ふ……結城も、気をつけろ……幸せなのは、今だけだ……」
生徒になんてこと言うんだ。
「先生、元気出してくださいよ」
「小田原琴部枝(おだわら・ごんべえ)……それも、ありかな……」
「先生しっかり!」
なんで俺の苗字使ってんだよ!
「私は新キャラの小田原琴部枝デカルチャー」
語尾が特殊過ぎる!
さっさとホームルーム進めてくれ!
「名無し先生。魁さんの苗字は、誰にも渡しませんよ」
「お、おぉそうか……」
優紀の怒りのオーラに圧倒される菜梨先生。
「じゃ、じゃあ結城。ギャグ要員でもいいから、私をヒロインに昇格してくれ。どんな見た目なのか、とか語ってくれ!」
何言ってんだこの人。
「お断りします。あまりにもあまりになので」
菜梨先生の見た目は、語ってはいけないほどにアレらしい。
アレについては、各々の想像に任せるとして。
「…………」
菜梨先生だけに限らず、見た目に関しては、大して語ってこなかった気がするんだよな。
「頼む結城!サブキャラはイヤなんだ!」
なんでそもそも優紀に頼んでんだよ。
「先生キャラなんて、ほとんど18禁のPCゲームでしかルートありませんよ」
「ならそれでいい!小田原!そういうことだ!」
この直後、俺は知った。
優紀はキレると怖い。
***
「すっかり忘れていたんだけど。私ってば魁の元カノなんだよね」
優紀と共に帰宅すると、傍芽が我が物顔で俺の部屋で漫画本を読んでいた。