第八話-6
「…………」
当時の魁は、中二だけに厨二病だった。
***
「待て」
「なに?」
「いや、なにってお前……」
誰が厨二病だよ!
そりゃ、自ら『正義の味方』を名乗っていたことはあるけど、今考えると物凄く恥ずかしくて、物凄く胡散臭いけど!
「魁さんの黒歴史ですね、わかります」
「くっ……」
優紀に弱味を握られた瞬間だった。
今後それを材料に色々要求されるに違いない。
「私は、ファイヤーシスターズだ!と思ったもんだよ」
「シスターズじゃないだろ」
「ファイヤーソロだ!」
「…………」
なんかかっこ悪い。
「さて、続きといきましょうか」
「あの、私としても続きを聞きたいんですけど、ハーモニーちゃんが食べおわったみたいです」
見ると、優紀の言うとおりハーモニーちゃんがオムライスを食べ終え、食器を洗っていた。
「うーん……中途半端なとこで終わらせると、苦情とかきそうだけど……」
誰からくるんだよ、その苦情。
「まぁしょうがないね。続きはwebで♪」
「ユーキ。茶碗洗ったよー」
「はい。偉い偉いですね」
優紀がハーモニーちゃんの頭を撫でる。
可愛いなぁ。
「美味しかったですか?」
「うん。卵の宝石箱や〜」
「ハーモニーちゃん。次は私が、ハンバーグを作ってあげるからね」
ハンバーグ……だと?
それは俺の好物で、同時にハーモニーちゃんの好物でもある。
料理の腕が優紀以上の傍芽が作った、大好物のハンバーグ。
これは……マズイぞ。
「えー。もう入らないよー」
「え?」
ハーモニーちゃんのその言葉に、傍芽が途端に絶望的な表情になる。
「だそうですよ。私の不戦勝、でいいですよね」
にっこり笑顔でそう言う優紀。
ま、まさかこいつ!最初からそれを狙って!?
「え、や、でも……」
「いいですよね?」
「……はい」
年下に威圧されて負けを認める傍芽。
これは酷い。
「これで、魁さんと結婚できるのは私ということになりますね」
「そう、だね……私がぶっかけた勝負だし……」
ぶっかけたって。
正しくはふっかけた、だ。
「私の出番は、ここで終わりってわけね」